窓の外のこの白い景色は憶えている。私は北海道の旭川生まれだ。これは雪だ。冷たいけど嫌いじゃない。思い出した。猫屋敷でたくさんの仲間と暮らしていたところを今のご主人夫妻に1,500円の北倶楽部のクッキー1箱で引き取られてきた。もう十年になるだろうか。お屋敷ではマリアと呼ばれていてそれはそれで照れくさかったけど、今の奥様に初対面でサスケと呼ばれたときはへこんだ。さすがにメスだしサスケはないだろうと今の名前をもらったけど、冗談みたいな名前だしあまりここでは言いたくない。でも最近は皆『~さん』と「さん付け」で呼んでくれるので悪い気はしない。それもそうだ。私はこの家ではうるさい子供達やサバトラのちびネコよりも先輩なのだ。大事にしてもらわないと。ちびのサバは日赤病院の前の看板の下でないているところを保護されて家にきた。もう5年ぐらいになるけど、仲良くしなさいといわれたけど最初から気に入らなかった。皆に簡単に抱っこされたり布団の中に潜り込んだりするので好かれているけど、そんなものネコのなんたるかが全く分かっちゃいない。ネコはもっと気高くないと。尻尾も短いし本当にいけすかない。あっ、今日はご主人はいつもより早い出勤だ。雪かきのスコップを持ってる。クリニックの駐車場は広いし大変なのだと言いながら久しぶりの雪かきで張り切ってる様子だ。雪かきを制する者は町内会を制すなんて言っていたけどそもそも町内会に入ってないよね。入った方がいいよ。