先日、訳あって某駅構内をスーツ姿で走った。
もちろん健康のためのジョギングではなくて、20時まで駅近くのホテルで水虫の講演をして20時13分の新幹線に乗る必要があったからだ。初めて訪れる街、駅だったが、なぜか非常にタイトなスケジュールだった。雨も降っていた。
普段1日200歩ぐらいしか歩いていないし、基本的に文化系なので走るのは得意ではない。では走って疲れて大変でした、といいたいかというとそうでもない。私は走っているときには基本的には頭の中では医者ではない。刑事(デカ)だ。刑事と書いてデカとルビをふる時点ですでに昭和世代だが、走っているときには、基本的に凶悪犯を追いかける刑事になっている。階段も2段飛ばしだ。もしフェンスがあれば飛び越えるだろう。改札も飛び越えたい気持ちだがそこまで我を失ってはいない。だが改札口でスーツの内ポケットを探って出すのは・・・もちろん切符だが、気持ちは拳銃だ。だからむしろスーツ姿で走るのは嫌いではない。電車に間に合わなくて駅のホームでがっくりと膝をついている私を見かけても変だと思わないで欲しい。またすぐに電車来ますよ、などと声をかけないで欲しい。その時は犯人をあと一歩で逃し、市民の皆様に申し訳ない、という気持ちなのだ。
予定の新幹線に間に合い座席にゆったりと座った私は窓の外を優しく眺めながらさぞ満足げな表情をしていただろう。